ストーリー

松崎ヒロシ(益岡徹)は、劇作家の老父と暮らすバツイチの万年脇役俳優。父・健太(津川雅彦)が華々しく活躍する陰で、代わり映えのしないテレビドラマの仕事を細々とこなす日々をおくっている。だが、そんな脇役人生もあと少しで終わる。ウディ・アレン映画の日本版リメイクの主役を演じることになったのだ。
ところが、やっとツキが回ってきたと喜んだのも束の間、ヒロシはひょんなことから大物議員の妻・黒岩トシ子(松坂慶子)の不倫相手に間違われ、そのスキャンダルがきっかけで映画出演の話は消えてしまう。
そう、ヒロシは親切な性格が裏目に出て、どこへ行っても人違いされるのだ! 店の前にいれば店員に、ホールにいれば係員に。ヒロシにとってこの人違いされやすいという自身の特性は厄介以外の何ものでもない。

そんなある日、ヒロシは駅のホームでスリの濡れ衣を着せられている若い女性アヤ(永作博美)を助ける。自身も女優の卵であるアヤは、一目でヒロシを俳優の松崎ヒロシだと認識し、彼の人違いされて困るという愚痴を「名優は瞬時にいろんなキャラに変身できるから名優なんでしょ」と明るく笑い飛ばす。ヒロシはそんなアヤの前向きなエネルギーにたじろぎながらも、自分にはない強さを持った彼女に惹かれていく。

恋の予感に動揺しているヒロシに対し、屈託のないアヤはごく自然にヒロシや健太の日常に慣れ親しんでいった。健太はアヤをヒロシの恋人として歓迎し、アヤも健太の創作活動に興味津々だ。健太とアヤが親密にしているのが面白くないヒロシは、本心とは裏腹にアヤに素っ気なく接してしまう。
そしてアヤが出演する舞台の公演日。ヒロシは今日こそうまくやろうと思って劇場に向かうものの、またも運が悪いことに誘拐犯に間違われて警察に連行されてしまうのだった。

アヤとの距離を縮めるのに四苦八苦する一方で、ヒロシはウディ・アレンのリメイク映画の主役を取り戻すため、黒岩夫人の本当の不倫相手を暴こうと奔走する。後輩に協力してもらって夫人の携帯電話を盗聴したヒロシは、ついに逢い引き現場をおさえることに成功し、証拠場面を激写。しかし、夫の虐待から逃れて恋人と仲睦まじく過ごす夫人の幸せそうな笑顔を見ているうちに、ヒロシの心にこれまでなかった感情が芽生え始める。

アヤとはすれ違いばかり。幾つになっても父には頭が上がらない。映画出演は絶望的。そんな状況の中で、ヒロシは半ば自暴自棄になりながら、自分が本当に守りたいものは何か、人生に求めているものは何かを考え始める。そして、この思いを伝えることを決意し、アヤが働くコンビニに向かって走り出すヒロシ。今度こそ、本当の気持ちを伝えることができるのか!?